日本人の睡眠と労働時間と生産性について~ドイツと比較して~

 活動量計を開発・販売するポラール・エレクトロ・ジャパンが2017年6カ月間の600万の睡眠データを活動量計で測定した睡眠データを分析によると、
日本人の平均睡眠時間は、主要28カ国中、最短睡眠時間だったと記載があった。

ちなみにその睡眠時間は日本人の平均睡眠時間は男性が6時間30分、女性6時間40分と28カ国中最短だった。最長は、男性はフィンランド人の7時間24分、女性はフィンランド人・ベルギー人の7時間45分で、更に睡眠中の体の動きや心拍数で分析する「睡眠の質」(最低1.0~最高5.0、28カ国平均3.2)の日本人平均は3.0と、28カ国中25位。最高はフィンランドの3.4、最低は中国の2.7というデータがある。

経済的影響と睡眠時間は相関関係があり、睡眠時間を週平均1時間増やせば、短期的には1.1%、長期的には5%ほどの生産性アップが見込まれるという研究もある。

また労働時間に関しては、勤勉な国ドイツと比較されるが、ドイツの年平均労働時間は1371時間(日本は1719時間)とかなり短いにもかかわらず、労働生産性は日本を約46%も上回っている。
GDPに関しては、2016年の1人当たりのGDPを比べると、ドイツ(4万1902ドル=約486万円)が日本(3万8917ドル=約451万円)を上回る(IMF<国際通貨基金>調べ)。

ドイツと日本の大きな違いの背景には、ドイツでは法律で「1日10時間を超える労働が禁止されていること」で企業での労働時間に上限規制をかる法律がある。つまり月平均の残業の上限ではなく、毎日10時間を超えて働いてはいけないという事。

また、経営者がこれを破り刑事事件になると経営者は前科者になるリスクや、例え罰金レベルでも、管理職のポケットマネーからの支払いになる。

実際に2009年4月にあった例ですが、テューリンゲン州の労働安全局が、ある病院の医長に対し、ほかの医師らに超過労働をさせていたという理由で6838ユーロの罰金の支払いを命じたという事もあった。

こういった一連の事情から、様々な工夫がなされ、長時間労働を防止するため、社員のパソコン画面に「あなたの勤務時間は、もうすぐ10時間を超えます。10時間以上の労働は法律違反です。直ちに帰宅してください」という警告文がポップアップされる会社や、また部下の勤務時間が10時間を超えそうになると、上司のパソコン画面に警告文が出て、部下の退勤を促す仕組みもある。

また、ドイツでは「ワーキング・タイム・アカウント」(労働時間貯蓄口座)というものが労働者全体の約6割に普及しており、残業時間を銀行口座のように貯めて、有給休暇などに振り替えられる。この口座がプラスである限り、好きな時刻に出社し、好きな時刻に帰ることができる。
更にドイツ人は労働契約書を労働者と直接に交わしているのである。つまり、会社側が長時間労働を強いることは、契約に無いので従わなくてよいことになる。

最近のドイツと日本の共通点、それは少子化と労働人口の減少。
ドイツ、メルケル政権は19日、欧州連合(EU)域外の外国人労働者の受け入れ拡大を閣議決定した。
具体的には、ドイツ語が話せて職業訓練を受けた人材であれば、就職先が決まっていなくてもドイツに入国して6カ月間職探しをできるようにするようである。ドイツでは難民増加が社会問題となったが少子高齢化で人手不足が深刻になっているため人手不足の解消が急務と判断した。

また特に地方の中小企業で優れた技能を持つ専門人材が不足しており、特に現在ドイツではすでに、労働力不足、特にエンジニアや情報技術関連、医師などの専門家不足が深刻な問題となっている。こういった中、労働条件が悪い企業には人材が集まらないことになる。

日本も就職は売り手市場で、会社が働きやすい風通しの良い会社でないと人が集まらないという状況になっている。
日本人も世界が情報化で狭くなってきた今日、無駄な作業や、業務を見直し、定時退社し、自分や家族との大事な時間を過ごすことをそろそろ真剣に考えていく時期になったのではないかと感じています。 

by 公認心理師/臨床心理士 木村晃子

参考図書:
サンケイ新聞 2018/4/10
SB新書 「5時に帰るドイツ人より5時から頑張る日本人」熊谷徹 著
日本経済新聞  2019/4/19

2019年4月30日
個人情報保護について

一般財団法人日本情報経済社会推進協会より、個人情報の取扱いを適切に行う事業者に付与されるプライバシーマークの付与認定を受けています。


プライバシーマーク
登録番号 14700129


個人情報保護について
メンタルヘルス関連の特集