ストレスチェック現状について~産業関係の学会の現状~
今年の大阪で開催された産業保健関係の学会に行き参加してきました
やはりストレスチェックについての話題が多く
ストレスチェック施行後の高ストレス者の対応が課題に上がりました
まず議題に上がったのが
〇産業医の高ストレス者面談です
殆どの企業の産業医はアルバイト的に
1か月に2時間くらいしか企業を訪問しないので(或いは名前貸し)
その2時間は殆どが労働者の健康管理に関することと
職場の安全や作業管理に関する相談で終わってしまいます
たまに、メンタル不調者の相談をする程度ですが
時間的な制約がありカウンセリングするのは難しいようで
ストレスチェックの面接指導までは・・・
到底及ばないというのが現実です。
産業医は精神科医が全医師の20%と言われており
ほとんどが内科、外科、整形外科等・・・
殆どなので専門外という現状です
解決策として…
◆実施者の元で臨床心理士や産業カウンセラーによる
高ストレス者の面談を行い高ストレス者の人数を絞った上で
産業医の先生を説得して依頼する
というのも一つの手段として有効ではないかということでした
実際当社でも臨床心理士の面談を挟む方法をいくつかの事業者様に
サービスを提供しましたが、事業者様からの反響も良かったので
有効な手段だと考えております
【高ストレス者が面談希望を申し込まない現実】
次に問題となるのが、せっかくストレスチェックを施行したにもかかわらず
勧奨しても高ストレス者が面接指導に申し込みをしないという事です
これにつきましては、パネラーも来年以降もこの高ストレス者を
追っていくしかないという話でした
面接指導に強制力がない以上
現状注意深く見守る以外ないということでしょうか・・・
まだまだ課題の多いストレスチェックですが
私たち実施者が感じたことは
今後のストレスチェックはもう少し、細やかな質問項目を作成していくことと
職業別の質問を作成することが事業者から求められるようになり
それにより効果的な職場改善につながるのではないでしょうか
認知行動療法はアメリカからの輸入もの…いまだそのまま使用?!
認知行動療法はそもそもBeck,A.T.(ベック)の認知療法からきています
そして行動療法と認知療法を効果的に組みあわせたものを
認知行動療法と呼んでいます
現在ではベックの認知療法を“認知行動療法”と
呼ぶのが世界の主流となっています
よく認知行動療法が日本人には本当は合った療法ではないか?
と疑問を持つ専門家も多くいます
なぜならば、欧米と比較すると日本人は感情的な部分が優勢で
以心伝心のような文化が背景にあるからだと言われています
そのことに対して、認知行動療法の大家は反論し論文を書いております
その論文によりますと丹野ら(2011)のメタ分析では
(※メタ分析とは分析の分析で複数の研究論文を収集しそこから比較検討して分析研究すること)
国内においての研究効果は見いだせなかったという事です
そこで更に佐藤・丹野(2012)は国内で行われた治療効果研究についてもう一度検討し
結果として認知行動療法には効果があるとしています
出典:佐藤・丹野「日本における心理士によるうつ病に対する認知行動療法の系統的レビュー」
行動療法研究、38、157167、2012
この研究では論文を12本使っており、それは2008~2012年のものです
そのうち10本の論文は2010年以降の新しいものでした
そして結論も「認知行動療法は西欧で生まれたので
西欧人には効果があるが、日本人には効果がない」という説は誤まりだとしています
しかしながら12本の論文のうち10本は対照群を設定しておらず
前後の比較に基づいていて、ランダム化によらない対照群を用いた比較する研究は1本だけで
残りの1本だけは無作為割付対照試験(客観的に治療効果を評価することを目的とした研究試験の方法)でした
このようなことから、やはり100%欧米人のものとして作成されたものは
我々日本人に向いているとは言い切れるとは言い難いかもしれません
実は同じことを思う研究者もおり
日本人向けの認知行動療法を15年もかけて実践していました
欧米人のような圧倒する論駁ではなく質問というゆるやかな対話を通していくスタイルのようです
今や保険適用となった認知行動療法なので、もっと日本人向けに治療スタイルを
構築していくことを一臨床心理士として努力していきたいと思っています
ストレスチェック臨床心理士が高ストレス者を面談
先日、産業関係の学会に行き
ストレスチェックの講義を受けてきました。
前半はストレスチェックの概要を産業医が講義して
後半は臨床心理士から講義を受けました。
前半の産業医からの講義では
ストレスチェックでは殆どの企業の産業医は
アルバイト的に1か月に2時間くらいしか企業を訪問しないので
その2時間は殆どが労働者の健康管理に関すること
作業の管理に関することで終わってしまうため
ストレスチェックの面接指導までは到底及ばないというのが現実とのことでした。
ですから、高ストレス者が出た場合
臨床心理士や保健師などが面談を行ってから
医師への面接へつなぐという連携が望ましいという事です。
産業医は精神科医が全医師の20%と言われており
ほとんどが内科、外科、整形外科、皮膚科など
色々な科のお医者様がされているのですが
それよりも臨床心理士の方が
心(心理分野について)のことが多少わかっているのではとのことでした。
まだまだ課題の多いストレスチェックですが
あくまでも職場で不調になった原因を探ることで
プライベートな問題ではないので
もし得点が思ったより高くなってもそこは驚かず
正しく客観的に診てもらうことがいいかと思います。
臨床心理士とは
心理学の専門家、臨床心理士というのは最近よく耳にすると思いますが、
臨床心理士とは一体、どんな職業で、どのように資格を取得するのでしょうか?
まず臨床心理士になるには、日本臨床心理士資格認定協会の試験に合格しなければなりません。
受験資格は、同協会が指定する大学院で心理学を学ぶか、
または海外で同等の教育を修めていることが必要になります。
合格すれば臨床心理士の資格を得られるものの
医師免許のような 国家による認定資格ではありません(学会資格)。
近年、国家資格に格上げしようという動きが厚生労働省で検討されている矢先に、
社員50名以上の会社に対してストレスチェックが義務化となる法案が決定し、
2015年の12月1日より開始となります。
余談になりますが、このストレスチェックでは産業医の負担が大きく
医師の中からも臨床心理士がなぜもっと活躍でるようにしないのかと
国に対して疑問視する声が少なくありません。
心理カウンセリングは、大半の時間を悩んでいる依頼者が話すことに費やされます。
当然1回約50分程度のカウンセリングをしても
その一度のカウンセリングで劇的変化はありません。
例えば、身体の病気は薬を飲んだり、入院したり、あるいは手術し
悪いところを切除すれば比較的早く治ります。
ところが周りにうつ病を抱えていらっしゃる方がいらっしゃれば理解できるでしょうが
心の病気は投薬でもすぐに完治することはなく相当な時間を要します。
特に患者が幼少時代の出来事や心の底にある怒りや他の要因など
無意識レベルでうつ状態になっている場合などは
カウンセリングでじっくりと臨床心理士に話すことが
精神科で薬を沢山もらうより改善するケースが多いのも事実です。