ストレスチェック臨床心理士が高ストレス者を面談
先日、産業関係の学会に行き
ストレスチェックの講義を受けてきました。
前半はストレスチェックの概要を産業医が講義して
後半は臨床心理士から講義を受けました。
前半の産業医からの講義では
ストレスチェックでは殆どの企業の産業医は
アルバイト的に1か月に2時間くらいしか企業を訪問しないので
その2時間は殆どが労働者の健康管理に関すること
作業の管理に関することで終わってしまうため
ストレスチェックの面接指導までは到底及ばないというのが現実とのことでした。
ですから、高ストレス者が出た場合
臨床心理士や保健師などが面談を行ってから
医師への面接へつなぐという連携が望ましいという事です。
産業医は精神科医が全医師の20%と言われており
ほとんどが内科、外科、整形外科、皮膚科など
色々な科のお医者様がされているのですが
それよりも臨床心理士の方が
心(心理分野について)のことが多少わかっているのではとのことでした。
まだまだ課題の多いストレスチェックですが
あくまでも職場で不調になった原因を探ることで
プライベートな問題ではないので
もし得点が思ったより高くなってもそこは驚かず
正しく客観的に診てもらうことがいいかと思います。
ストレスチェックにおける実施事務従事者の役割
実施事務従事者とは「調査票の回収、集計若しくは
入力又は受検者との連絡調整等の実施の事務については
必ずしも実施者が直接行う必要はなく
実施事務従事者に行わせることができます。
事業者は、実施の事務が円滑に行われるよう
「実施事務従事者の選任等必要な措置を講じるものとする」と定められています。
簡単に言えば、実施者のほか、実施者の指示により
個人の調査票のデータ入力、結果の出力事務などに携われる事ができるという事です。
現実的に考えた場合、普段から忙しい産業医の方々が
ストレスチェックの実施者として事務面も含めた
全ての業務を担うことは非常に困難と考えられます。
どうちら方と言えば、事業者側よりも
人事担当者様などが実施事務従事者として
ストレスチェック実施前後のサポートをするケースが多いと考えられています。
職場環境等の評価のための調査やストレスチェックを実施するに当たっては
個人のプライバシーの保護に留意しなければなりません
また、「労働者からの相談対応に当たった者およびストレスチェックの
実施事務従事者はそこで知り得た個人情報の取扱いに当たっては
関連する法令及び社内規程を遵守し、正当な理由なく
他に漏らしてはならない事とします。」とあります。
この事から、実施事務従事者は、大変重要な役割を担う事になります。
健康康状も個人情報と考えられることから、その守秘義務に関する事で
もしかしたら、プレッシャーがかかることもあるかもしれませんが
それらの事を全てはねのけるだけの精神力の持ち主でないと務まらない仕事かもしれません。
実施事務従事者を決める際には、決して安易な考えでなく
これらの事を想定して、信頼できる方にお願いするようにしてください。
ただ、実施事務従事者自身もストレスチェックの対象の一人ですので
「ストレスチェック制度に関わる情報管理や不利益取り扱いなどに関する検討会」においても
ストレスチェックを受検する従業員の心理的な影響が懸念されており
実施事務従事者の業務範囲等は今後指針が示される見込みとなっています。
ストレスチェックにおける衛生委員会の役割
ストレスチェック制度に関する指針
(心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施
並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針)を参考にすると
ストレスチェック制度の実施に関する規程には
衛生委員会で審議の上、次のような事項を規定することが必要となります
- ストレスチェック制度の目的に係る周知方法
-
ストレスチェック制度は、労働者自身のストレスへの気付き
及びその対処の支援並びに職場環境の改善を通じて
メンタルヘルス不調となることを未然に防止する一次予防を目的としており
メンタルヘルス不調者の発見を一義的な目的とはしない
という趣旨を事業場内で周知する方法 - ストレスチェック制度の実施体制
-
実施者が複数いる場合は、共同実施者及び実施代表者を明示すること。
なお、外部機関にストレスチェックの実施の全部を委託する場合は
委託契約の中で委託先の実施者、共同実施者及び
実施代表者と実施事務従事者を明示させること - ストレスチェック制度の実施方法
-
・ストレスチェックに使用する調査票及びその媒体
・調査票に基づくストレスの程度の評価方法及び面接指導の対象とする高ストレス者を選定する基準
・ストレスチェックの実施頻度、実施時期及び対象者
・面接指導の申出の方法
・面接指導の実施場所等の実施方法 - ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法
-
・集団ごとの集計・分析の手法
・集団ごとの集計・分析の対象とする集団の規模
集団ごとの集計・分析は、あくまでも努力義務となっていますが
ストレスチェックの実効性を考慮した場合、メンタルヘルス対策として
現時点では最も望ましい方法と考えられています。 - ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い
-
・事業者による労働者のストレスチェックの受検の有無の把握方法
・ストレスチェックの受検の勧奨の方法
- ストレスチェック結果の記録の保存方法
-
・ストレスチェック結果の記録を保存する実施事務従事者の選任
・ストレスチェック結果の記録の保存場所及び保存期間
・実施者及びその他の実施事務従事者以外の者によりストレスチェック結果が
閲覧されないためのセキュリティの確保等の情報管理の方法 - ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析の結果の利用目的及び利用方法
-
・ストレスチェック結果の本人への通知方法
・ストレスチェックの実施者による面接指導の申出の勧奨方法
・ストレスチェック結果、集団ごとの集計・分析結果及び面接指導結果の共有方法及び共有範囲
・ストレスチェック結果を事業者へ提供するに当たっての本人の同意の取得方法
・本人の同意を取得した上で実施者から事業者に提供するストレスチェック結果に関する情報の範囲
・集団ごとの集計・分析結果の活用方法 - ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の開示、訂正、追加及び削除の方法
-
・情報の開示等の手続き
・情報の開示等の業務に従事する者による秘密の保持の方法 - ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の取扱いに関する苦情の処理方法
-
苦情の処理窓口を外部機関に設ける場合の取扱い
なお、苦情の処理窓口を外部機関に設ける場合は、当該外部機関において
労働者からの苦情又は相談に対し適切に対応することができるよう
当該窓口のスタッフが、企業内の産業保健スタッフと連携を図ることができる
体制を整備しておくことが望ましい。 - 労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること
-
労働者にストレスチェックを受検する義務はないが、ストレスチェック制度を
効果的なものとするためにも、全ての労働者がストレスチェックを受検することが
望ましいという制度の趣旨を事業場内で周知する方法。 - 労働者に対する不利益な取扱いの防止
-
ストレスチェック制度に係る労働者に対する不利益な取扱いとして
禁止される行為を事業場内で周知する方法。
(ストレスチェック指針より抜粋)
これらの項目を、衛生委員会で、調査審議するというのはかなりの時間と労力が必要となります。
今回、ストレスチェックの実施が義務化されたことにより
衛生委員会そのものの意味あいや、必要性、重要性も大きく変化する事となります。
中でも、産業医の方と、衛生管理者等とのコミュニケーションは今まで以上に大切になる事は間違いありません。
『毎日、産業医の方が常勤として8時間くらい出勤してくださる方であれば
コミュニケーションを取る機会は多いので、何も心配する事はありませんが
実際そのような契約している産業医の方はほとんどの事業場でいないと聞いています。
産業医の方の中には限りある時間の中で、週に1回
もしくは、月に数回、フルタイムというわけにはいかず
数時間だけ会社に来て産業医の仕事をされているという方
また、そのような契約を結んでいらっしゃるという事業者が
ほとんどなのではないでしょうか?
そういった産業医の方に、衛生委員会に出席して頂き
多くの調査審議事項に参加してもらい、意見を述べていただく事は
なかなか難しいのが多くの事業者の実情のようです
ましてや、ストレスチェック後も高ストレス者の選定、面接指導などの
時間を取って頂く事はたやすい事ではありません。
今回施行されるストレスチェックは衛生委員会そのものを見直す
いい機会・時期になるかもしれません。
衛生委員会とは
労働安全衛生法に基づき、一定の基準に該当する事業場では
安全委員会、衛生委員会(又は両委員会を統合した安全衛生委員会)を
設置しなければならないこととなっています。
一定の基準とは、常時使用する労働者が50人以上の事業場で
全業種がその対象になります。
衛生委員会設置の目的は、労働者と使用者が一体となって
労働災害を防止することに取り組むという事にあります。
労働災害の防止のためには、安全委員会や衛生委員会を設置して
労働者の危険、又は健康障害を防止するための基本となるべき
対策(労働災害の原因及び再発防止、過重労働等)などの重要事項について
十分な調査・審議を行う必要があります。
労使が一体となって行う調査審議事項は、以下になります。
1安全衛生に関する規程の作成に関すること
2.安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること
3.安全衛生教育の実施計画の作成に関すること
4.定期に行われる健康診断等の結果に対する対策の樹立に関すること
5.長時間にわたる労働による従業貝の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること
6. 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること
衛生委員会の構成メンバーは
1. 総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者等(1名)
2.衛生管理者
3.産業医
4.労働者(衛生に関する経験を有する者)
※1.以外の委員については、事業者が委員を指名することとされています。
なお、この半数については、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は
その労働組合(過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)
の推薦に基づき指名しなければなりません。
その他に、衛生委員会がすべき事は決められており、以下の通りになります
①衛生委員会を毎月一回以上開催すること
②委員会における議事の概要を労働者に周知すること
③委員会における議事で重要なものに係る記録を作成しこれを3年間保存すること
常時使用する労働者が50人未満の事業者などは
委員会を設けるべき事業者ではありませんが
安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を
設けるようにしなければならないという法律(労働安全衛生規則第23条の2)があります。
大きな事業場や、工場などでは以前から衛生委員会が
しっかりと活動している事とよく耳にします。
そのような衛生委員会では、今回の義務化された
ストレスチェック制度に際して、衛生委員会等で
調査審議すべき事項を決める事は難しいことではないかもしれません。
ただ、今まであまり機能していなかった場合
今回のストレスチェック実施にあたり
上記の事項を決める事は大変になるかもしれません。