アサーション

アサーションとは、より良い人間関係を構築するためのコミュニケーションスキルの一つで、自分と相手の両方に敬意を払い、相手の立場を尊重しながら率直に、一方的に自分の意見を押し付けるので我慢するのでもなく、自分の欲求、感情、意見、権利などを表現する事をいいます。
1950年代にアメリカで、自己主張を苦手とする人を対象としたカウンセリング手法として生まれました。

【アサーションの要件
①自分の意見の意思、感情、意見を素直に表す
愛情や同意のようなポジティブな感情や意見だけでなく、怒りや反対のようなネガティブな感情や意見も隠さずに素直に表現する。
②感情に流されない冷静な自己表現
怒りなどのネガティブな感情をそのまま相手にぶつけるのではなく、自分の感情を客観的に捉えてコントロールし、社会的に容認できる形で表現する。決して黙り込むことではありません。
③他者や状況への配慮に基づいた柔軟な対応
他者の立場や権利を尊重すると同時に、自分と他者を取り巻く状況にも配慮し、相手を傷つけないように、状況に適切な言動を柔軟にとる。
④自分の行動に対する主体的な決定
他人から強要されて行うものではなく、自分の判断・意志で、自分の責任において決定し、実行する。

【アサーション・トレーニング】
自分も相手も大切にした自己表現ができるように身につけていくトレーニング(自分の気持ち、考え、信念等が正直に、率直にその場でふさわしい方法で表現される)
〇対人関係の様式(コミュニケーションのタイプを大きく3つに分けて考える)
☆アグレッシブ(攻撃的):自己中心、他人には無神経、自己主張が強い。自分は絶対に正しく、自分の権利はしっかり確保、自分の意思を全うするためであれば明確な悪意が伴う事もある。
勝ち負けで物事を決める。
常に優位に立とうとする。
例えば、失敗した人に対して、理由や言い分など聞く余地もなく頭ごなしに叱責をするような表現。
自分の気持ちは抑えることなく表現してるが、相手の気持ちは考慮していないので、相手は不快な思いをする。
また、怒鳴ったり、威圧的な態度で表現するだけでなく、どんなに優しい口調で言ったとしても、相手に選択の余地のないような状況で頼み事をするなど、巧妙に自分の欲求を押し付けて、相手を操作して自分の思い通りに動かそうとする態度。
精神的には幼い。
☆ノンアサーティブ(非主張的):自分は後回し、他人優先。人との争いや葛藤を避けたい思いが強い。
例えば、いつも友人に雑用を頼まれて嫌なのに、はっきりと断れずに引き受けてしまう態度。一見すると、相手を配慮しているようにも見えるが、自分の気持ちに率直ではなく、相手に対しても率直ではない。
自分の気持ちを抑え続けていると、次第に欲求不満がつのり、相手に対して「譲ってあげた」という恩着せがましい気持ちや、「人の気も知らないで」という恨みがましい気持ちになる。
☆アサーティブ(主張的):自分の気持ちを素直に伝えつつ、なおかつ相手の気持ちも十分考慮する。
自分と相手との葛藤は当然と考え、その解説の為に互いに歩み寄りの方策を探ろうとする。
自分の気持ち、考え、信念に対して正直・率直に、その場にふさわしい方法で表現し、それが相手に受け入れてもらえない場合やお互いが率直な意見を出し合えば、相手の意見に賛同できないこともあると考えられる。
お互いが歩み寄って一番いい妥協点を探ることがアサーティブなあり方である。
理想的なタイプということができ、アグレッシブとノン・アサーティブの中間で、アサーションを扱いこなせるタイプでバランス型と表現できます。

【アサーションの実行スキル】
①主張する価値があるか自問してみましょう
主張することは相手にとって何らかの脅威を与えるということが考えられます。まず、実行する前に、主張する価値があるかどうか、態度や行動を変えてくれる可能性があるかどうか、自問してみましょう。
②タイミングに注意を払いましょう
タイミングが悪いと、相手が自分の主張に対して脅威や恐怖、怒りを感じるので、相手の置かれている状況を考慮し時期を待ち、自分の感情をコントロールできるまで待つように注意しましょう。
③「私(I)メッセージ」を使いましょう。
「あなた(You)メッセージ」を主語にすると相手を責める口調になりやすいので、私を主語にして表現する「私(I)メッセージ」を使うと、自分の考えや感情を表現する提案型のメッセージになり、押し付けがましくなくなり、相手を傷つけることなく伝えられます。
「あなた(You)メッセージ」を使うと相手に焦点化した断定的なメッセージになり、判断的なニュアンスになってしまします。
④肯定的に言いましょう。
「~できない」という否定的な言葉は相手が受け入れにくいものです。
否定で終わらせず、前向きな善処策を一緒に提案することで、相手は受け入れやすくなります。
同じことを否定的にではなく肯定的に表現することで、相手に不快感をもたせないようにしましょう。
⑤具体的に言いましょう。
「~していただけると助かります」、「~に困っています」など、感情や今の気持ちを伝える表現を加えることで、正直な意志が伝えやすくなります。
具体的に言わなければ、いくら主張的に言っても自分の意図が相手に正確に伝わらないでしょう。
⑥聴く(傾聴)スキルを使いましょう。
相手の応答に対して耳を傾け、そのように受け止めているかの確認する必要性、主張は、表現を変えながら、繰り返し、継続的に行われることも多いことから傾聴スキルは重要な役割を果たすことになります。
⑦非言語チャンネルを主張的に使いましょう。
言葉による主張を補強するように、身体動作(身振りや姿勢、体の向き、表情、視線)、空間行動(相手との距離)、身体接触、準言語(話す速度、声の大きさ、間の取り方)を利用するようにしましょう。
⑧依頼の言葉の基本型は「感情+説明(理由)+依頼内容+(肯定的効果)」で行いましょう。
依頼内容だけを言うのではなく 1.自分が今、どのように感じているか 2.依頼(お願い)をしなければならない理由 3.どうしてほしいのか という依頼内容の3つを必ず伝え 4.依頼内容を承諾してもらうことが自分にもたらす肯定的効果を付け加える ということが基本となります。
相手に新たな行動を開始してもらう場合、相手にこれまでの行動をやめてもらう場合に有効となります。
⑨断りの言葉の基本型は「謝罪(感謝)+説明(理由)+断り表明+代替案」で行いましょう。
いきなり断るのではなく 1.依頼や誘いを断ることの謝罪あるいは感謝の言葉から始め 2.断らなければならない理由 3.明確な断りの表明 4.代替案を表明することで人間関係の悪化を防ぎましょう。
代替案はあいまいな表現となってしまってもこの場合は良いでしょう。


投稿日: 2021年2月12日 | カテゴリー: 心理学用語