アンビバレンス

アンビバレンス(ambivalence)とは、あるひとつの対象に対して、相反するふたつの感情を抱いたり、相反する態度を同時に示す心理状態のことになります。
例えば、「好きだけど嫌い」、「一人になりたいのに誰かいて欲しい」、「尊敬しているけど軽蔑もしている」、「かわいいけどいじめたい」、「見たいけど見たくない」、「行きたいけど行きたくない」…。
人は心の中に「前向きな気持ち」と「後ろ向きな気持ち」という相反する気持ちを同時に持つことがあります。
「両面価値」、「両価性」などとも翻訳されますが、そのまま「アンビバレンス」もしくは「アンビバレンツ」と表現するのが一般的になります。

また、よく混同されるアンビバレンスとアンビバレントは名詞と形容詞の違いだけになります。
「両価性」「両面価値」を意味する名詞のアンビバレンス(ambivalence)に対し、形容詞のアンビバレント(ambivalent)は「両価性の」「両面価値の」といった様子を表わす言葉になります。

アンビバレンスという言葉は、ドイツ語のアンビヴァレンツ(ambivalenz)に由来し、元々はスイスの精神医学者オイゲン・ブロイラーがつくった造語だったとのことです。オイゲン・ブロイラーはアンビバレンスを精神分裂病のおもな症状と考えていましたが、その後、精神分析で有名なジークムント・フロイトが度々、精神分析理論に組み入れ、病的でない心の状態を説明するのに用いりました。
アンビバレンスは病気ではありません。
それどころか、それそのものが自然な心の状態であったり、本当に言いたいことへのヒントが隠されている場合もあります。


投稿日: 2021年2月5日 | カテゴリー: 心理学用語