社会的学習理論(social learning theory)
社会学習理論
1950年代後半、当時優勢であった行動主義学習理論の中で、カナダ人心理学者のBandura,A.(バンデューラ)が提唱しました。
社会的学習とは、社会における他者の影響を受けて、その態度や価値観、社会的習慣、行動を模倣して習得していく学習することをさします。
社会的学習理論は、学習過程と社会的行動における理論であり、人は他者を観察し模倣することによっても新しい行動を得る事ができるとする理論で、行動は強化によってのみ決定されるとする伝統的な行動理論を拡張し、学習者における様々な内的過程の役割に重点をおいた理論になります。
モデリング
バンデューラは、人間においては直接学習より観察学習が支配的であると考え、他者の行動の結果をモデルとして観察することで成立する学習の理論を提唱しました。
また、バンデューラは、「他者の行動やその結果をモデル(お手本)として観察することにより、観察者の行動に変化を生ずる現象のこと」をモデリングと呼び、模倣や同一視といった概念を包括するものとして提唱しました。
モデリングが成立するには4つのプロセスが必要となると仮説を立てています。
① 注意過程(観察対象に注意を向ける):この過程では、モデルとなる対象とそのモデルが持っている特徴を選択し、観察している段階になります。モデルとなる対象は多く存在し、例えば子どもの場合は、親、兄弟、学校の先生などの身近な存在から、テレビやYouTube、書籍などで知った著名人・有名人も含まれます。
②保持過程(対象の行動の内容を記憶する):この過程では、観察したモデルを記憶に残している段階になります。頭の中でその人やその人の特徴を記憶として保持するようにしています。モデルがとっている言動を抽象化したり、頭の中でその対象の言動を繰り返し模倣することで、記憶に残すようにしています。
③運動再生過程(実際にその行動を模倣してみる):この過程では、記憶に残したモデルの言動を自ら再生する段階になります。頭の中で記憶していることと、実際に再現できることは全く異なる場合もあります。ただ、再生することで、自分が実現できている行動と頭の中で記憶したモデルの行動との差が見えることになります。実際に行動を模倣してみることによって、その差を埋めるための調整を行うことも可能となります。
④動機づけ過程(学習した行動を遂行するモチベーションを高める):この過程では、モデルを模倣することで学習した行動を続けることの動機づけを行う段階になります。その行動を実践することによって得られた満足感や嬉しさや楽しさ、周りから褒められた、距離が縮まったなど様々な動機つけが存在することになります。動機づけには自分ではなく、外から受ける外発的動機(褒め言葉など)や自分の中から発生する内発的動機(自らの満足感など)が存在します。
ここで重要なことは、他者の行動を観察することが自分の行動の変容に結びつくということになります。
この事は、実際の強化や罰以外に、イメージによる強化が意味を持つということを意味することになります。
そして、イメージによる強化の形態には、外的強化と代理強化、自己強化の3つがあります。
外的強化は、その行動が適切に行える状況つまり外的な環境によって強化される場合になります。
代理強化は、自分自身ではなく他者ある行為の結果として何らかの強化を受けていることを観察している事を通して、学習者もその行動をとることによって強化が得られるという期待が高まることで強化される場合になります。
自己強化はある基準に自分の行動が達した時、自分自身で行動に強化を与える場合になります。
「代理強化」は、観察によるオペラント条件づけ(自発的な行動に対する条件づけ)と言うことができます。
一方、「代理的条件づけ(代理的レスポンデント条件)」は、観察による古典的条件づけになります。
無条件刺激の経験が無くとも観察で条件づけが生じるというものになるからです。